特集/コラム
「心の中にやりたいことがあったら遠慮せずにやった方がいい」
岡本理沙さん(映画監督・プロデューサー)
シンガポールを拠点に活動するドキュメンタリー映画監督兼ディレクターの岡本理沙さん。8月に行われたシンガポール最大のシアターフェスティバル「OCBCシンガポールシアターフェスティバル」では、日系アメリカ人ジャーナリストの役を演じるなど、映画製作にとらわれず幅広く活躍する岡本さんに、ドキュメンタリー映画に興味を持つきっかけとなった学生時代の話や現在製作中の作品などについて話をうかがった。
-なぜシンガポールを拠点に活動されているのですか。
「家族が住んでいるから、というのがその理由。4歳のときに一家
で香港に渡り、7年間をそこで過ごした後、父の仕事の関係で来星しました。大学はアメリカで学び、卒業後もそのまま現地で就職しましたが、1年後に家族の住むシンガポールで仕事を見つけることにしました。
シ ンガポールへ戻ってきた時は、実は何がしたかったのか自分でもよく分かっていませんでした。仕事を探すためにシンガポールで通った母校の先生に相談しに 行ったところ、英文学講師として働く機会を私に与えてくれました。「一生に一度は学校で教える経験がしたい」と考えていたこともあり、講師という仕事はと てもうれしいオファーでした。講師の仕事は楽しかったのですが、やはり自分の心の奥底に何かもやもやしたものがあり、それを取り除くため外に出てドキュメ ンタリー映画の撮影を開始しました」
-映画監督を志したきっかけは何ですか。
「テレビを見ていた時、関戸誠さんという日本人のカウボーイが出てくる「Johnnie Walker」のコマーシャルを目にしました。とてもインパクトが強く、彼のドキュメンタリーを撮影したいと思い立ち、彼が住む名古屋まで直接会いに行き ました。日本に住んでいる日本人は、枠からはみ出さない生き方をしている人が多いと思うのですが、誠さんは小さいころからカウボーイになるのが夢で、ロデ オを学ぶために言語の壁もいとわずにアメリカへ渡った人。こんな夢を実現するパッションとバイタリティーのある人はそうはいないと思い、彼がテキサスへ行 く際に私もカメラをもって同行しました。
ロデオ・ブル・ライダーになる訓練の撮影をしている間に、ナショナルジオグラフィック社がこのアイデアを気に入ってくれ、プロのカメラクルーによる再撮影をしてテレビの1時間番組にすることになりました。私の映画監督としてのキャリアはここから始まりました。自分自身のキャリアを分かりかねていたときに、誠さんが私に夢を追う勇気を与えてくれました。彼とは今でも親しい友人としてお付き合いさせていただいています」
-現在製作中のドキュメンタリー番組について教えてください。
「アジアの食べ物の歴史を探るドキュメンタリーシリーズ「Discovery Asia」の準備をしているところです。日本、韓国、タイなどアジアの国々で発展した食べ物が、世界でどのように進化を遂げているのかを紹介する番組で、 各国のディレクターがそれぞれ指揮を執っています。私は日本の担当です。例えばもともと西洋から日本に入ってきた牛肉ですが、日本人が改良を重ねた 「Wagyu Beef」は現在世界中に広まっています。その進化の過程を、各国の食の伝統を踏まえながら伝えていきます。来年春に放送予定なので、今はリサーチをして いる段階ですが、食べ物の映像を見ているとお腹が空いてしまって仕方ありません(笑)」

-ドキュメンタリー映画監督、プロデューサーとしての目標を教えてください。
「作品を見た人が影響を受け、その方の人生を少しでも良い方向に変得られるようなドキュメンタリー作品を作っていけたら理想。そして世の中がちょっとでも変わってくれればうれしいですね。現在製作中の環境問題を扱った「eco-polis」という番組はその良い例。番組を見た子どもが大きくなったらこういうテクノロジーを開発していきたいという、夢や希望を与えられるような番組に仕上がっていると思います。テレビはどこにでもあるものなので、いろいろな人を影響する力をもっていますね。
-読者にメッセージをお願いします。
「自分の歩みたい道を歩むこと。いくらおかしいと言われてもても、周りに反対されても、心の中にやりたいことがあったら遠慮せずにやった方がいい。自分の道を歩んでいる人は魅力的に感じますね」
シンガポール経済新聞編集部
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