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【インタビュー】2009-03-21

「設計を通じて、夢を形にするお手伝いをしていきたい」木下高志さん(一級建築士・一級施工管理技師)

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 3月14、15日の両日に渡り、シンガポールで初めて帰国後の住まいに関する相談会を行なった住友林業。約50人の在星邦人が訪れ、実際に建築の契約締結に至ったケースも見られた。これまでも木造住宅建築において多角的なアプローチを行なってきた住友林業においても、海外にいながら日本に家を建てるという本格的なプロジェクトはこれまでにない新しい試み。このプロジェクトを中心となって進めている木下高志さんは、これまで一級建築士として500棟以上の住宅を手がけ、それぞれの施主の抱える「思い」を形にしてきている。今回は家作りにかける思い、施主への提案を中心にお話を伺った。

―「海外にいながら日本に家を建てる」というプロジェクトについてお聞かせください。

「住友林業には2007年にスタートした『未来のちからプロジェクト』という社員を対象にしたプロジェクトがあります。これは社内でさまざまな事業計画を公募し、プレゼンにかけていくというもので、私も迷わず応募しました。海外にいながら家を建てるというこの企画は、長い間温めてきたもの。ぜひ実現したいと強く願っていました。役員へのプレゼン、幾つもの選考を経てやっと計画が採用されました。

 家とは人生の時間の大半を過ごす大切な器です。いくらきれいに作り上げても、住む人に心地よくフィットして快適な空間とならなければ、住宅としての意味はないと思うのです。海外で暮らしている方が帰国間際になって慌てて帰国後の家を探し、時間の制約などによって妥協の上に『終の棲家』ともなる重要な場所を決めてしまうこともありますが、家とは決して安い買い物ではないだけに、後悔しても安易に買い換えることはできません。ならば、時間をかけたとしても、じっくりと相談した上で、その人にとって心から寛げる空間を作り上げていきたい。お客様にとって建築士はなんでも話し合え、相談できるパートナーであるべきだと思っているので、常にそのことを留意して接するようにしています」

―設計の道にすすむきっかけはどのようなものでしたか。

「建築の道に進もうと思ったのは高校生のときです。小学生の時から絵を描くことが好きで、風景画や人物などを描いていました。その絵がコンクールなどにでると画家や漫画家になりたいと考えた時期もありましたね。建築物も好きでしたが、最初は漠然と見ていただけ。学科は算数、数学が好きで、絵やデザイン、数学を融合させると何が向いているだろうと考えると建築学科という道が見えてきたんです。大学入試前には将来建築士になりたいとはっきり考え、建築学科に進学しました。勉強していくうちに、設計の楽しみがわかるようになって、生活に欠かせない住まいに強く惹かれるようになったのです。就職先としては大手ゼネコンも考えましたが、ゼネコンでは設計に進んでもパーツの設計専門になってしまうかも。例えば、階段なら階段のみを設計していくといった感じで、全体を見ていくことは難しいのではと考えました。全部を自分で総合的に見ることができて、表現できるもの。それが住宅だったのです」

―建築士になってからの歩みをお聞かせください。

「卒業後はまず住宅メーカーに就職しました。最初の2年間は設計ではなく現場監督を行なっていました。若かったこともあって、大工や左官工などのベテランの職人とプライドのぶつかり合いで意見を戦わせたりしながら、現場の基礎、住宅の建築工程すべてをまさに身をもって会得していきました。

設計専門になってからはRC(鉄筋コンクリート)や鉄骨建築の設計を中心に住宅併用の店舗やマンションを手がけるようになりました。この頃はバブル崩壊前で、色々なお客様と逢っては希望を聞きさまざまな物件を手がけることができて楽しい時期でした。ただ、楽しい一方、いくらデザイン賞などを受賞しても自身の設計にはっきりとした自信を持つことができていませんでした。私にとって大きな転機が訪れたのが29歳の時です。大手ゼネコンとのプレゼン競争を経てあるビルのオーナーが私の設計を気に入り指名してくれたのです。総工費は7億円、当時としてもどの会社も請け負いたかった大きな案件でした。ゼネコンは収益面からの提案をメインに話をしていましたが、私は収益面ももちろん考え巻いたが、使い勝手、デザインなど、ありとあらゆる側面から提案を盛り込みました。今思えばやりすぎたかなと思う感もありますが、お客様はとても気に入ってくださったんですね。お客様のご自宅にはこれでもかというほどの収納、また最終的には実現しませんでしたが室内に橋も計画しました。この案件を請け負えたことで、始めて自分の設計に自信を持つことができるようになり、本当に建築設計が好きになりました。ステップアップのために転職を考えたのは、その後のことです。

住友林業に入社しようと思ったのは、住宅建築に携わる人間として木造のよさをしっていたからです。昨今は街中に鉄筋コンクリートの建物が溢れていますが、日本最古の建築物も木造。住友林業は森づくりからはじまり、木材流通、木造注文住宅をメインに木をキーワードにした総合住生活関連を展開しています。木の持つエネルギー、その魅力を知り尽くしている会社といえ、ここで注文住宅を手がけていきたいという強い思いが入社の決め手となりました」

―住宅設計をする際心がけていることを教えてください。

 「住友林業に入社後、約1年半は再び現場に戻りました。当初は木造建築に対してはまだまだ知識が足りないかもしれないという思いもありましたが、この経験により新たな自信を得ることができました。当時は一通りの仕事が終わってから、懐中電灯をもって再度夜現場に戻って夜遅くまで、木造住宅を勉強していました。その時代的にはOKな行動でしたが 今ではNGですね。その後再び設計へと戻り数年後には全国にいる住友林業の設計士としてトップの表彰を受けるようになりました。しかし自分にとってはそこからがすべての始まりでした。

 私の住宅設計に関するポリシーは『お客様に喜んでいただけるものどう提案していくのか』ということ。何気ない打ち合わせ中の会話から相手が何を求めているのか、その家庭、教育のテーマはなにか、ひいてはどんなことが問題になっているのかを拾い上げ図面に反映していきます。本当に、ちょっとした一言が大きく設計に作用することもあるのです。家とはお客様にとって幸せになるために建てるのだからと考えると提案は尽きません。具体的にわからないお客様の本当に必要なものを形にすることが設計士の務めだからです。

 結婚、子育て、親の介護というライフスタイルの変化もこの時期、設計に大きな影響を与えました。元来不器用なので、何事にも全力投球しないと気がすまない性質なんです(笑)。これらすべては設計士としての幅を広げる要素となりました。自分が家庭を持ったり、子供の教育を考えたり、介護を実体験してみるまでは、もちろん勉強はしましたが、あくまで想像でそれらに対応する設計を考えていたんですね。自分ではよかれと思っても押し付けだったこともあると思いますそれまではなぜ自分の提案上手く伝わらないのかと思い悩むこともありましたが、それが自分が経験を積むことによって、あるとき急にすべての引き出しが埋まったというか、色々なご要望にぴったりと即した提案ができるようになったんですね。そして設計の基本は『お客様の話をじっくり聞く』。ここに尽きると思います

―これから家を建てようとしている人にメッセージをお願いします。

「なにも具体的なビジョンがないから相談できないのではなくて、家のことを少しでも考えた時点でまずはご相談いただきたいのです。今はご夫婦だけでも将来こういう子育てをする家庭にしていきたい、こういう老後を過ごしたいなど思ったことはまず話してみてください。もちろん資金面の相談も大事です。お伝えいただければ優先順位をつけながらのご提案も計画もできます。最終的なパートナーは弊社ではないかも知れない、それでもまずは夢と気持ちを形にする最初のお手伝いをしていきたいと願っています。

 各自が『理想の家』のビジョンを持っていらっしゃると思います。それを実現するのは施主、建築士のいずれかではなく、互いがよきパートナーとなり進める共同作業があってこそ。お客様のよきパートナーとしてこれからも設計に携わっていきたいと願っています」

―木下さんにとっての「理想の家」とはどんなものですか。

「結婚するときに家内に引いて見せた図面があるんです。夫婦の夢やこれからの生活スタイルについて語ったもので、一生懸命説明し家内も喜んで聞いてくれました。まだ実際の建物にはなっていませんが、いつか実現させたいと思っています」

―読者の方にメッセージをお願いします。

「人生におきることを自ら一生懸命対応しないと表現できないことがあります。もちろん 書物などで基本をマスターするのは当たり前ですが、自分が一生懸命取り組まなければ、相手に伝えられません。だからこそすべてを全力で行い、自分の知りえるすべてを設計に反映させてお客様の人生を預かるつもりで家を建てていきたいのです。

今後は次世代の建築士を育てることも目標のひとつ。住友林業の設計士は常に進歩して、さまざまな側面からのご提案をしていきます。これからは彼らと一緒に海外からの注文住宅を手がけていきたいと思っています」

シンガポール経済新聞編集部

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木下高志さん: 住友林業株式会社 海外事業本部・海外開発部 海外レジデンシャルグループ マネジャー・一級建築士。20年以上に渡り住宅や建築に関わり、設計、工事管理、監修した住宅は500棟以上。二児の父親であり、祖母、母の介護を経験していることで施主の本当に必要としているものへの提案、家族の抱える問題を設計面から解決する提案を実体験に即し行なっている。社内でも数多くの賞を受賞しているトップ設計士。

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